鈍行列車と路線バスを乗り継ぎ、映画『千と千尋の神隠し』の温泉街のモデルとも言われている九份へ。台北から片道一時間半ほどで行ける距離なので、日帰り観光も十分可能です。古い市街地の夜のライトアップは夕方六時頃から始まりますが、少し早めに着いたので散策することに。
中心地の商店街から離れて、路地裏を歩いていると一軒のギャラリーを偶然見つけました。少し入りにくい雰囲気だったけれど、窓から垣間見えた写真の作品がとても好きな作風だったので、勇気を振り絞って足を踏み入れてみました。
ギャラリーにはオーナーと思われるおじさんが一人いて、室内に展示されている写真や絵画は全てこの方の作品だそうです。写真は全てフィルムカメラで撮られていて、台湾の各地で撮影した作品を色々見せていただきました。
その中の一枚の写真にとても惹かれました。1970年代に撮られた海岸の写真で、長年の雨や風の侵食によって変化した地形の模様が一枚の抽象画のように見える写真。
作品を眺めながら、オーナーの方と言葉を交わした時間がとても心に残っています。
ギャラリーを後にして、どこかでお茶をしようと歩いていると、街のあちらこちらに微睡む猫ちゃんの姿が。九份には思いのほか猫が多く、九份の近くにある猴硐(Hóu dòng)という村は「猫村」としても有名なんだそうです。
眺めの良い小さな広場の近くのカフェでアイスコーヒーをテイクアウトして、その広場のベンチで休憩を。ここにも二匹の猫ちゃんがいました。のびのびと過ごす猫ちゃんを眺めながら、ここで日が沈むのを待ちました。
夜になり赤い提灯が連なる街の中にいると、どこか異世界に入り込んだような気分。でも正直なところ、ライトアップは綺麗だったけれど、観光客が想像以上に多くて、あまりゆっくり夜の景色を楽しむことはできませんでした。
それよりも、ギャラリーでの素敵な出逢い、猫ちゃんを眺めながらのコーヒー休憩、昼間過ごしたあののんびりした時間が九份の良い思い出です。